第34章

九条遥が前の客の資料を整理している時、まるで派手な蝶のような格好をした男が近づいてきた。「こんにちは、この物件の間取りを紹介していただけますか?」

男はわざとらしくソファに寄りかかり、まるで骨がないかのような姿勢で座った。九条遥は顧客だから丁寧に対応するという心構えで、標準的な笑顔を浮かべた。「もちろんです」

しかしこの光景は安藤景程の目には、九条遥が自分に興味を示していると映った。彼は角に立っている江川夕美の方を見て、少し顎を上げた。

彼が常々言っていたように、この世に彼に興味を持たない女性などいない。ただ彼が努力しないだけだ。彼が身を低くして誘惑すれば、落とせない女性などいないのだ...

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